真空管コンサルティングと特許の関係(その1)
こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド® 代表の佐々木です。
真空管のコンサルティングにおいては、お客様のお話をたくさん聞かせていただくことが、より良い音作りへの近道だと思っております。お客様が真空管に何を求めていらっしゃるのかを把握できれば、コンサルティングの9割は、達成されたと同じで、残り1割は、ご希望条件に沿った真空管をお薦めするだけです。
お客様の中には、うまく伝えられない方もいらっしゃいますが、時間をかけて私のほうからアプローチすることによりまして、最後には、意志疎通をとることができます。
特に、コンサルティングの対象が「音」という、非常に抽象的なものであるため、その表現方法が難しいという事情もあると思います。
しかしながら、お客様の頭の中には、「こうい音にしたい」というはっきりとしたものが必ずありますので、それをいかに引き出すかが腕の見せ所です。
どのような仕事にも通じるのですが、コンサルティング力は、コミュニケーション力だと思います。私がコミュニケーション力に磨きをかけた修行期間は、特許業界の10年間です。この10年間は、私のビジネスキャリアにとって、かけがえの無いもので、成長させていただいた貴重な時間でした。
簡単に言うと、特許の仕事は、発明を理解して、発明を文章化することです。こう書いてしまうと、いわゆる代書屋だと思われる方もいらっしゃいますが、次元が全く違います。
まず、最初は、「発明を理解する」ということがいかに困難であるかを思い知らされます。というのも、自分の専門分野以外の発明がほとんどだからです。特許業界では、電気系、機械系、化学系にカテゴライズされており、私は、電気系でした。電気系といっても、弱電、強電、通信、光学、音響等という具合に非常に守備範囲が広く、全てに精通するというのは不可能です。
しかしながら、日々の特許業務では、発明の内容を選ぶことができませんので、電気系であれば全て担当しなければなりません。逆に言うと、これはできない、あれはできる、ということを言っていたのでは、特許業界では使い物にはなりません。
しかも、クライアントは、大手電機メーカー、IT企業、国の研究機関等であり、発明の内容は非常に高度なものが多く、素早い理解力がものをいう世界です。
1件の発明は、1~3日で理解し、かつ特許明細書として文章化します。発明の内容にもよりますが、A4でおよそ20ページ、図面がおよそ10枚くらいの特許明細書を作成します。
この特許明細書を、日替わりよろしく、月に10件~15件くらい処理します。ですから、毎回発明の内容が日々変わりますので、頭の切り替えも必要になってきます。
私が実際に担当した案件ですと、「ミサイルの近接信管」→「携帯電話機の受信回路」→「インターネット販売システム」→「プリンタのサーマルヘッド制御回路」→「電子ピアノの鍵盤制御装置」→「光スイッチング装置」→「ハードディスク装置」等という具合に、めまぐるしく変わります。
もちろん、専門分野以外の発明は、最初は、全く判りません。
理解できないと、文章化することはできません。
どのようにして理解するのでしょうか。
次回につづく。
2010.3.2
Good music !
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