バンド打首獄門同好会と会社経営の意外な共通点とは
こんにちは、真空管専門店のヴィンテージサウンド代表の佐々木です。
今日は、真空管とは関係無い話をしてみたいと思います。
前号で、打首獄門同好会のリーダ/ギタリスト/ヴォーカル 大澤敦史 会長による動画版の真空管交換レポートをご紹介いたしました。
あまりにも、秀逸な作品であったため、「打首獄門同好会」というものに、深い関心がふつふつと沸いてきました。
なお、バンド応援プロジェクトの際には、大澤会長とは、お電話でお話しさせていただき、非常に礼儀正しい好青年という印象を持っておりましたが、動画を拝見して、俄然興味が出てきたのです。
おかげで、昨日は、ほぼ一日中、打首獄門同好会のHPや、2005年3月から始まった日記、そして、ライブの様子を写したyoutube動画を、仕事そっちのけで見入ってしまいました。
ここで、打首獄門同好会の簡単なプロフィールを。
大澤敦史(Vo&G)
河本あす香(Drums)
junko(Bass)
*同バンドHPより引用(敬称略)
という3ピースバンドで、思わず「あるある、うんうん」とうなずいてしまう日常の出来事を、観察眼鋭いわかりやすい言葉で、重低音サウンドに乗せて表現するロックバンドです。
「いい意味で、大人が真剣に遊ぶとこうなるんだな」という手本で、いつしか、私も含めて大人が忘れてしまっている大切な魂のカケラのようなものを思い出させてくれるナイスなバンドです。
気が付けば、amazonで最新アルバム「なわけで、それがし打首獄門同好会ですよろしくダカダダンジャーン」を注文していました。
「届くのが楽しみだな。」
「真空管のエージングや測定をしながら早く聞いてみたい。」
と思いつつ、なぜ、打首獄門同好会に強い関心を寄せたのかというと、ステージにおけるパフォーマンスの派手さと、その裏で継続的に努力する姿勢に大きなギャップを感じたからです。
逆の言い方をすれば、メンバーそれぞれが継続的な努力家だからこそ、あのようなパフォーマンスを発揮できるのだと、日記を読んで強く思いました。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
打首獄門同好会の日記を拝見していたら、バンドの運営というものは、会社の経営とまったく同じだ、という点に気付いたのです。
つまり、バンドは会社、リーダーは社長、メンバーは社員、ライブ・CD等の売り上げは、会社の売り上げに対応しています。
バンドを始めるというのは、会社を立ち上げる、すなわち起業することと同じです。
そこから、バンドを軌道に乗せ、メジャーになり、印税だけで生活するというのが、もっともわかりやすいバンド成功の形です。
しかしながら、バンドをやろうと決意した100バンドのうち、5年後に生き残っているバンドはどれくらいでしょうか。
統計が無いので、推測の域を出ませんが、数バンドでしょうか。
一方、会社の場合には、1年生存率、5年生存率という考え方があり、ある統計によると、起業した100社のうち、1年後に生き残れるのは、20社、5年後に生き残れるのは、1,2社というデータもあります。
もちろん、業種や業態によって、ばらつきがあると思いますが、起業したあとは、過酷な生存競争が始まります。
まさに、サバイバルな世界で、参入障壁が低いほど、誰でも起業できるため、競争はさらに激化します。
それでは、生き残るためには、どうしたらよいのでしょうか。
私の場合には、平成10年に起業してから、13年が経過してもなお、倒産することなく、事業を継続させておりますので、「今のところ」生存競争に勝っているということが言えます。
しかしながら、あくまで、「今のところ」なのです。
明日は、どうなるかはわかりません。
というのが、経営者がいつもかかえている、ぼんやりとした不安です。
とはいうものの、会社経営は、前に進んでゆくしかありません。
立ち止まったら、マグロのように、その会社は死んでしまいます。
最近、若い方から起業の相談を受けることが多いのですが、つぎの2点をアドバイスするようにしています。
「起業はだれでも簡単にできるが、会社を続けることのほうが難しい」
「売り上げは簡単にあげることができるが、利益を出すことは難しい」
会社なんて、法務局に法人登記すれば、一丁上がりで、誰にでもできます。個人事業主ならもっと簡単で、税務署に届け出を出すだけです。
これに対して、会社を続けるには、利益を出し続けなければならず、その間には、経営環境(円高、円安、強力なライバル出現、法改正等)が変化しますので、それに対応できなければ、ゲームオーバーです。
経営能力とは言葉を変えると、変化する環境に適応する能力だということができます。
一方、売り上げは、極論すれば、安売りに走ることで、簡単にあげることができます。
がしかし、安売りをすれば、当然ながら利益が出ません。そうすれば、会社を継続することもできなくなり、負のスパイラルに突入です。
私に言わせれば、安売りは、無能な経営者がたどりつく、安直で危険な経営手法です。安売りすれば、利益が圧縮されますので、その分のしわ寄せを、正社員、パート、取引先に転嫁させなければなりません。
給料は下がるわ、モチベーションも下がるわ、そして何よりも、お客様へのサービスの質が下がるという致命的な状況が発生します。
ユッケで死亡者を出した、かの、焼き肉店も安売りスパイラルに入ってしまったワーストケースです。
それでは、利益を出すためにはどうすれば良いのでしょうか。
がしかし、「そんな良い方法があったら、こっちが教えてほしい。」と世の中の経営者は全員叫ぶと思います。
私も同様に叫ぶでしょう。
会社経営に王道はありません。
それぞれの会社の社長は、血眼になって、トライアンドエラーを繰り返し、会社を回し、気付いたら、5年経っていたというのが本音だと思います。
その間には、相当の努力とそれに伴う自己犠牲が要求されます。
どの業界でも、楽しては前に進めません。
バンドの運営もしかりだと思います。
バンドのリーダは、プレイヤーとしての技術力はあって当たり前で、それプラス、経営力が無いと、バンドの継続は困難です。
ここでいう経営力とは、お金の収支に関する会計力、ライブハウスやレーベル等との交渉力、自バンドを売り込む営業力、CD販売やライブの企画力等、を指しますが、プレイヤーとしての仕事以外の全てです。
つまり、バンドのリーダは、なんでもできなければならない点で、会社経営者と同じです。
もちろん、ある程度以上の規模になると分業体制も採れますが、最初は、すべて自分ひとりで何から何までこなさなければなりません。
ここで、重要なのは、バンドのリーダも会社経営も、はじめは初心者で、手探りからスタートして、数えきれない失敗と引き換えに少しずつ成長してゆくという点と、努力しても成果が上がらない場合がほとんどという点です。
それでもなお、少しの運を味方にして、継続してゆく先に、バンドまたは会社としての一定の成果があると思います。
プロセスも重要ですが、それにもまして、バンドも会社も結果が求められます。
結果が伴わなければ、バンド解散、会社倒産という、うれしくない末路が待っています。
では、プロセスに関係なく、結果だけ出せば良いのかという考え方もありますが、私は、こういう考え方は短絡すぎて、好きではありません。
やはり、プロセスがしっかりしていたからこそ、結果がついてきたと思うのです。
逆に、プロセスが貧弱で結果だけ出た場合には、いわゆる一発屋扱いで、たまたま運が良かっただけで、次の結果が出ないことのほうが多いのです。
プロセスと結果がマッチしてこそ、仕事に対するリスペクトを私は感じます。
打首獄門同好会の日記を最初から読むと、バンドの歴史、すなわち、音楽レーベルからメジャーデビューを果たすまでのプロセスがよくわかります。
バンド創成期のワクワクした時期、さまざまな困難を知恵と度胸で乗り切ってゆくさま、音作りのこだわり等です。
打首獄門同好会の場合、プロセスと結果がマッチしたからこそ、深い共感と、興味が私のなかに芽生えたんだと思います。
どこか、起業した13年前の自分と重ねてみていたのかもしれません。
今回、第2回バンド応援プロジェクトを通じて、このようなすばらしいバンドに出会え、しかも、応援できて、爽快感にも似た心持になることができました。
打首獄門同好会の大澤会長、そしてメンバーの皆様にこの場を借りて感謝するとともに、ますますのご活躍をお祈りしております。
いつか、打首獄門同好会のライブを見てみたいなと思います。
バンド応援プロジェクトは、さまざまなバンドと交流を持つことができ、本当に楽しい企画です。
思いっきり自画自賛しています。
つぎはどのようなバンドに出会えるか楽しみです。
2011.5.16
Good music !
(c) 2011 VINTAGE SOUND