真空管の寿命を著しく短くする効果的な方法(その2)
こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド代表の佐々木です。
前回は、真空管アンプの「スタンバイスイッチ」だけをオンにした状態が継続されると、真空管の寿命が著しく短くなる旨の説明をしましたが、今回は、技術的な根拠を説明したいと思います。
まず、真空管の寿命とは、どういう状態を指すのでしょうか。主として次の6要件が挙げられます。
(1)プレート電流が許容値以下に減少(電子放出量の減少)
(2)真空度の低下
(3)ヒータの断線
(4)電極間ショート(絶縁不良)
(5)許容値以上のノイズ発生
(6)物理的な破壊(例えば、ガラスが割れる)
つまり、これらの要件のうちいずれか一つに該当した場合には、「その真空管は寿命である」、ということができます。
次に各要件について、詳述します。
(1)プレート電流が許容値以下に減少(電子放出量の減少)
真空管の特性を理解する上で最も重要なファクタは、電流と電子です。電流は、電子の流れのことを指します。電流は、プラスからマイナスへ流れますが、逆に、電子は、マイナスからプラスへ移動します。混乱しそうですが、「電流と電子の流れる方向は逆だ」と覚えてください。
これは、電流を発見した先人が、自然界の法則の通り、「きっと、電流は、プラスからマイナスへ流れるであろう」と定義しこれが広く認知された後に、電流の実体である電子が発見され、実は、マイナスからプラスへ流れることが判ってしまったことが原因です。
直熱管(2A3,300B)の場合には、ヒータの表面に酸化物が被膜され、ヒータの温度上昇に伴い、酸化物から熱電子が放出されます。直熱管とは、ヒータとカソードが一体にされた構成の真空管を指します。直熱管は、ヒータが断線しやすく、酸化物が剥離しやすいという欠点を有しているため、後述する傍熱管に改良されてゆきます。
一方、傍熱管(KT88,EL34)の場合には、酸化物が塗布されたカソードの内部に設けられたヒータの温度上昇に伴い、カソードが加熱され、表面から熱電子が放出されます。傍熱管とは、ヒータとカソードとが別体とされた構成の真空管を指します。
真空管の主役は、これらの熱電子(以下、単に電子と称する)、すなわち、電流(プレート電流)です。極論を言えば、プレート電流をうまくコントロールすることにより、増幅作用や整流作用という真空管の基本的な作用を実現させることができるのです。
従って、電子の放出量が減ると、プレート電流も減少し、真空管としての機能が低下し、寿命に至るのです。電子放出量(プレート電流)が減少する主な原因は、次の通りです。
(a)酸化物の剥離
(b)酸化物の蒸発
(c)真空管の内部抵抗の増加
ここで、少しだけ、種明かしをすれば、「(c)真空管の内部抵抗の増加」の原因は、メインスイッチだけがオンとされたた状態が継続されることです。
次回は、真空管の内部抵抗とメインスイッチの関係を深く解説してゆきたいと思います。
つづく
2010.2.16
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