2011年10月21日金曜日

プリ管12AX7で、光るものと、光らないものの謎(その1)




プリ管12AX7で、光るものと、光らないものの謎(その1)

こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド® 代表の佐々木です。

プリ管の代表的なものとしては、12AX7が有名で、ギターアンプ、オーディオアンプ、マイクプリ等で使われていることは周知の事実です。

まずは、2種類の12AX7の画像をご覧ください。

12AX7 JJ プリ管 光るもの

第1の画像 ECC83S/12AX7 JJ ↑↑↑

12AX7 Mullard プリ管 光らないもの

第2の画像 12AX7 Mullard ↑↑↑

これらの第1の画像と第2の画像とを比較すると、ECC83S/12AX7 JJ(第1の画像)では、コウコウとしたオレンジ光を確認できますが、12AX7 Mullard(第2の画像)では、あるはずのオレンジ光が消えています。

この状態では「故障なのでは?」と不安になってしまいますが、12AX7 Mullardには、定格電圧が加えられており、正常に動作しております。実際に、Mulalrdをご購入いただいたお客様から問い合わせがあります。

オレンジ光は、真空管が動作している象徴であって、みなさんが、これを見て、ホッとしたり、癒されたりするハズです。

ところで、このオレンジ光の正体は何でしょうか。簡単に言うと、白熱電球のニクロム線のようなもので、真空管では、ヒータ(傍熱管)と呼ばれ、電流を流すと、熱とオレンジ光を発生させる金属線です。ちなみに、2A3や300B等の直熱管では、ヒータではなく、フィラメントと呼ばれております。

よく、真空管からオレンジ光が出ていないとき、「ヒータが切れたのでは?」と言われますが、これはその通りで、ヒータが断線して、電流が流れないため、オレンジ光が出ない状態、すなわち、真空管が死んだ状態となります。

歴史的には、上述したフィラメント(直熱管)が先輩で、フィラメントが断線しやすいという欠点を克服するために、後にヒータ(傍熱管)が開発されました。フィラメントとヒータは、電子を放出するカソードの温度を上げるという点で一致しておりますが、構造が全く異なります。

直熱管の場合には、略筒型のプレート電極内に、帯状のフィラメントが略V字型に折り曲げ配設されており、フィラメントの表面に酸化膜が形成されております。この酸化膜は、加熱により、電子を放出するという特性があります。

つまり、フィラメントに電流が流れると、オレンジ光とともに温度上昇し、酸化膜から電子(正確には熱電子)がビュンビュン放出されます。このように、直熱管では、フィラメントと酸化膜とが一体とされ、これがカソード電極です。つまり、直熱管では、フィラメントと酸化膜のことを別名カソード電極と呼びます。

そして、電子がビュンビュンの状態で、スタンバイスイッチがオンにされると、プレート電極にプラスの直流電圧が印加され、マイナスの電子がプラスのプレート電極に引き寄せられることにより、プレート電流が流れます。電子の移動を電流と呼びます。

より正確には、プレート電極とカソード電極(フィラメント+酸化膜)との間にグリッド電極があり、このグリッド電極に加えるバイアス電圧(マイナスの直流電圧)により、電子の移動量、すなわち、プレート電流を制御しております。

それでは、直熱管のフィラメントは何故断線しやすいのでしょうか?

答えは、上述した「帯状のフィラメントが略V字型に折り曲げ配設されている」構造になっているため、フィラメントが「遊びが大きい」ブランブラン状態とされており、振動の影響をもろに受けるからです。

当時は、道路事情も悪く、真空管工場から販売店までの移動中にかなりの振動を受けるため、販売店に着くころには、ほとんどが断線していたという笑うに笑えない話もあったようです。

ちなみに、真空管のピン配置図を見ると、300B等の直熱管においては、フィラメントは、Fという記号が使われております。一方、12AX7等の傍熱管においては、ヒータは、Hという記号が使われております。従いまして、フィラメントは、直熱管の用語であって、傍熱管では使いません。

つぎに、フィラメント断線多発という欠点を克服するために開発された傍熱管(12AX7等)の構造について説明します。傍熱管においては、加熱用のヒータ電極と、電子を放出するカソード電極とが別体とされていることが第1の特徴です。

第2の特徴としては、円筒状のカソード電極内に、折り曲げられたヒータ電極が収容されている点です。この構造により、ヒータ電極の遊びが無くなることで振動に強くなり、断線事故が激減しました。

この傍熱管の構造は、非常に画期的な方法で、それ以降のほとんどの真空管に採用されたという歴史的背景があります。

ここで、上述した第2の画像(12AX7 Mullard)においても、内部では、ヒータ電極がコウコウとオレンジ光を放っているのですが、それを外から確認できません。

何故、オレンジ光が見えないのでしょうか。

答えは、次回のお楽しみとしておきましょう。

2010.6.3                

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