ヴィンテージパワー管の偽物にも注意
こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド® 代表の佐々木です。
最終回は、弊社の仕入れで偽物のパワー管をつかまされそうになった話をします。
平成21年6月某日、心待ちにしていた海外からの荷物がFedexにより到着しました。私は、心を躍らせながら、大きなダンボールをカッターで開封し、梱包材をどけると、そこには、Siemens EL34 とトップに印刷されたオレンジ色の元箱がズラリと入っていました。
発注数は、200本。
思わず、「オー」と歓声を挙げたほどでした。Siemensは、ドイツのヴィンテージ管ブランドで、これほどまとまった本数を見るのは初めてで、「よくもこんなに見つかったものだ」と感心していました。
早速、1本の元箱を手にとると、デットストック品だが、いい感じに劣化した箱の手触りが伝わって、これは本物に間違い無いと確認しました。
そして、箱から真空管を取り出した瞬間、期待が落胆に変わりました。
「やられた。」
真空管は、真っ赤な偽物でした。真空管関連業者なら一目見てわかりますが、その真空管は、JJ EL34のバリバリの現行品で、スロバキアでせっせと製造されているものでした。正確には、JJ EL34にSiemens EL34と「クッキリ」印刷された偽物です。
「これは夢かもしれない」と思い、別の箱をつぎつぎと開けても、出てくるのは、JJ EL34をベースにした偽物ばかりです。
ここでめげてもしょうがありませんので、偽物検証のため本物のJJ EL34と、偽物のSiemens EL34とを並べて記念撮影をしてみたのが、つぎの画像です。
左がJJ EL34、右が偽物Siemens EL34とその元箱。外見も中身もうり二つです。ちなみに、元箱だけは本物です。
JJ EL34は、トップがドーム型となっているのが特徴で、本物のSiemens EL34は、平らです。ゲッターのリング形状、ヒータの感じ、内部構造物の全てがまるでコピーしたかのように同一です。唯一の相違点は、一方がJJのロゴ、他方がSiemensのロゴであるという点だけです。
別の角度からの画像を見ると、上部マイカの周縁部の切り込みも一緒です。
ドーム型頂部の特徴や形状一致でもはや偽物と疑う余地はありませんが、言い逃れできない決め手は、ピンのハンダ状態です。この画像を見ると、ピンの下半分がキレイな銀色になっているのがわかります。ハンダが新しく、酸化していない証拠です。百歩譲って、形状がたまたま一緒だったとしても、ヴィンテージ管の場合、製造から少なくとも30年前後は経過しておりますので、ハンダの表面が酸化し、いぶし銀のように必ずくすみます。偽物Siemensには、このくすみが一切ありません。本物のJJ EL34のハンダと目視で比較しましたが、ピッカピッカの新品状態でした。
という訳で、これらの証拠写真とともに海外の仕入れ先にクレームと返金を要求したところ、以外にも、即座に返金に応じてくれ、偽物Siemensたちは、着払いで強制送還されました。こちらが真空管業者だとわかり観念したのだと思います。実質的な被害額がゼロで済んだことは、不幸中の幸いでありましたが、真空管屋としては、良い経験をしたと思っています。こうして、皆様にワーストケースとしてご紹介できるのですから。
おそらく、本物の元箱だけが大量に発見されたことに目をつけ、悪徳業者が偽物Siemensを制作したのでしょう。
この種の偽物は、もっと大量に作られているハズですから、弊社以外に日本国内にも入っていると考えるのが自然です。
同様のケースが無いか、ネットで検索したところ、真空管アンプキットで著名なキット屋さんのブログでもSiemens EL34が紹介されていました。
真偽のほどは不明ですが、画像で拝見する限りでは、ご紹介した偽物EL34と特徴が非常に似ているようにも思います。万が一、弊社でつかまされた偽物EL34と同じならば、水際でくい止められたことを祈るばかりです。
おそるべし、ヴィンテージ管の世界といったところでしょうか。
2009.11.3
Good music !
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