真空管の寿命を著しく短くする効果的な方法(その3)
こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド代表の佐々木です。
前回の「(c)真空管の内部抵抗の増加」について簡単に説明します。真空管を単純化したモデルは、真空管に電圧をかけて電流を流すというものです。文系の方でも、電圧がかかったら、電流が流れるという物理現象を、経験的にイメージできると思います。
ここで、中学校の理科で登場した「オームの法則」を思い出しましょう。このオームの法則は、電気関連の諸法則の大親分であり、次の(1)式で表されます。
電圧=抵抗×電流・・・・・(1)式
(1)式における抵抗は、真空管の内部抵抗のことです。抵抗とは、電流の流れにくさのことです。従って、抵抗が小さいほど、電流が多く流れ、逆に、抵抗が大きいほど、電流が少なくなります。この関係を明確にするために、(1)式を電流の式に変形すると、つぎの(2)式となります。
電流=電圧/抵抗・・・・・(2)式
(2)式より、電流は、電圧を抵抗で割った値ですので、分母である抵抗が大きくなると、電流が少なくなり、逆に、分母である抵抗が小さくなると、電流が多くなります。
ここで、抵抗がゼロだったらどうなるでしょうか?
答えは、電流は無限大となります。昔、流行った超伝導の考え方です。超低温状態にすると抵抗がゼロになる物質を超伝導物質と呼びます。
真空管の場合には、内部抵抗は、ゼロではありませんので、電流は、有限値となります。
上述したオームの法則を理解した上で、アンプのメインスイッチだけをオンにした状態、つまり、ヒータだけを点灯させて、プレート電流を流さない状態では、ヒータにより加熱されるカソード電極に中間層抵抗(interface resistance)が生成されるという問題が発生します。
この中間抵抗は、カソード電極の基体金属と、この基体金属を被覆する酸化物と間に生成され、カソード電極に対して、直列に介挿されます。つまり、(2)式の抵抗は、(製造時の内部抵抗)+(中間層抵抗)となるため、中間層抵抗が大きくなるに従って、大きくなります。これにより、電流が少なくなり、許容値以下になると、真空管の寿命となります。
この中間層抵抗は、真空管を普通に使っている状態、換言すれば、メインスイッチとスタンバイスイッチの双方をオンにして、ヒータを点灯させかつプレート電流を流している状態でも生成されますが、その成長スピードは遅いので、問題にはなりません。
これに対して、メインスイッチのみをオンにして、プレート電流を流さずに、ヒータだけを点灯させると、中間抵抗層の生成が著しく、真空管の内部抵抗を短時間に増大させてしまいます。おのずと、真空管の寿命も、極端に短くなります。
おわかりいただけたでしょうか。このことを知っていることで、長期的に見れば、真空管の交換コストを低減させることができるのです。
これらを踏まえて、アンプの起動は、メインスイッチをオンにして、カソードからの電子放出が始まる1~2分後に、スタンバイスイッチをオンにして、プレート電流を流し、中間層抵抗の生成を抑制するというのがベストの方法です。
また、ステージの休憩中に、スタンバイスイッチだけをオフにして、休憩後にオンにしている方も散見されますが、この行為は、休憩中に中間層抵抗をどんどん成長させ、真空管の寿命を縮める行為に他なりません。
休憩時間が長い場合は、メインスイッチとスタンバイスイッチの両方をオフにするか、短い場合には、両方オンにしっぱなしにするのが最も効率的な使用方法ということができます。
そして、ステージが終了したら、「スタンバイスイッチ」をオフにした後、「メインスイッチ」をオフにするという順番が正しいオペレーションです。
ぜひお試しあれ。
次回は、真空管の寿命のその他要件について、さらに解説してゆきます。
つづく
2010.2.19
Good music !
c 2009 VINTAGE SOUND