固定バイアス方式とは(part 1)
上述した「自己バイアス方式」が「自分でバイアス電圧をかける方式」であるのに対して、この「固定バイアス方式」は、「他人に自己バイアス電圧をかけてもらう方式」です。いわば、「自己バイアス方式」は、自力本願型で、「固定バイアス方式」は、他力本願型です。
具体的には、固定バイアス方式では、バイアス電圧専用の別電源(以下、バイアス専用電源と称する)が必要となります。このバイアス専用電源のことを他人と表現していますが、実際には、同じアンプ内に設けられる電源の一種です。
ここで、勘の良い方ですと「一種ということは他にもあるのか?」と思ったはずです。パワー管に固定バイアス方式を採用している真空管アンプには、三種類の電源が必要となります。
- 一つ目は、ヒーター(フィラメント)電源で、真空管のオレンジ色に光る電極(ヒータまたはフィラメント)に電圧を供給するための電源です。ヒーター電源の電圧は、使用する真空管により様々ですが、12AX7,12AU7等は12.6Vで、EL34,KT88,6L6等は6.3Vです。ヒーター電源は、通常、交流電源ですが、直熱管には直流電源が使われる場合があります。
- 二つ目は、プレート電源で、真空管のプレート電極にプレート電圧を供給するための直流電源です。プレート電圧は、例えば、約200~1000Vという高電圧で、使用真空管や設計思想により、最適な値が設計者により決定されます。
- 三つ目は、上述したバイアス専用電源で、真空管のグリッド電極にバイアス電圧(前述したように、一部の送信管を除き、マイナスの直流電圧)を印加するための直流電源です。
固定バイアス方式が他力本願型で、別電源のバイアス専用電源からバイアス電圧を真空管へ供給することまでは理解できたと思いますが、腑に落ちないのが「固定」というキーワードです。「固定」というと、調整できないというイメージがあり、バイアス調整と固定バイアスとは矛盾する感じがします。
固定というと、物理的な状態を指すため、電気にはなじまない感じもします。固定なのに、なんでバイアス調整なんだと思ったはずです。かくゆう私も、そうでした。未だに、しっくりこない名称だと個人的には思っています。
固定バイアス方式の場合には、真空管の動作に関係なく、一定のバイアス電圧(例えば、-48V)が真空管に(固定的に?)印加されています。
つまり、真空管が熱暴走して大電流が流れようと、真空管が突然死して、オレンジ光が消えようと、またまた大地震が発生しようと、一切おかまい無しの涼しい顔で、一定のバイアス電圧を印加しつづけます。そんな、揺るがない石のような硬い意思を感じさせるバイアス専用電源の態度を「固定」と比喩しているのでしょう。きっと。
これに対して、自己バイアス方式の場合には、真空管のご機嫌を常に伺っており、熱暴走しそうになれば、バイアス電圧を低く(バイアスを深く)してプレート電流を小さくし、やる気がなくなれば、バイアス電圧を高く(バイアスを浅く)してプレート電流を大きくし、という具合に、固定バイアス方式とは対照的です。まるで、子供をあやしている親のようです。
(次回に続く)
以上
2009.6.15
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